Institute of Behavior Traits 行動特性研究所

寄稿

「行動特性とリーダーシップと人間力」

(株)人材ルネッサンス 代表取締役 吉原俊一

リーダーシップとは何かという問題は、歴史的にみるといろんな方々が持論を展開されておりますし、学者の方々もいろいろ研究されております。現在は百家争鳴の状態といえるかもしれません。またリーダーシップの定義については、人によってさまざまですが、私自身は、「言動によって人に与える影響力である」ととらえております。

第二次世界大戦後のリーダーシップの研究の中では、リーダーシップ特性論、リーダーシップ行動論、リーダーシップ状況即応論、変革型リーダーシップ論など様々な理論が展開されておりますが、私自身は、その中でもリーダーシップ行動論が、リーダーシップを考えるときの一番の基本になるのではないかと考えております。すぐれたリーダーの行動に焦点を当てた研究です。
リーダーシップ行動論の共通するところは、何らかの課題を達成するために集団が存在するとしたときに、リーダーの行動を目標達成に向けた「課題達成の機能」と集団内の人間関係を調整する「人間関係に配慮する機能」の2つに分けてとらえたところです。
リーダーシップ行動論には、いくつか代表的な理論があります。日本発のものとして三隅二不二先生によって1966年に提唱されたPM理論が有名です。リーダーシップ行動論の中でも代表的な理論です。

簡単に紹介しますと、リーダーの行動をP(Performance:目標達成機能)機能とM(Maintenance:集団維持機能)機能に分けてとらえます。目標を設定し、計画を立て、メンバーに指示を出すなどは、P機能です。メンバー間の人間関係やチームワークがよい状態を維持・配慮するなどは、M機能です。リーダーシップをこの2つの機能の高低で分けて4つのタイプで捉えます。(PM型、Pm型、pM型、pm型です)なお大文字は、その行動が多く、小文字の場合は少ないことを表しています。研究の結果では、PM型がリーダーシップ発揮に最も効果的としています。

リーダーシップ行動論について紹介いたしましたが、人の行動というものを考えたときに、その人の行動は、内面的な意思・思想・思考のようなものから出てきます。内面的なその人の思考があって、その思考から行動が出てくる。人の内面的な思考と行動がつながって、その人のリーダーシップが発揮されます。そこに私が強く関心を持っている「人間力」というものが出てきます。
私自身は、以前から「人間力」ということについて関心を持っており、「人間力」とリーダーシップ行動の関係をもう少し深く研究してみたいと考えております。「人間力」とは何かということについては、「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」(人間力戦略研究会)という定義があります。アメリカではどうも適切な言葉が見当たりません。あえて挙げるなら、「INTEGRITY」という言葉でしょうか。行動というものが人間の思考から出てくるものであるとすると、行動を起こそうとする人間の意志・思考と行動(経験から学んだ行動と新たに起こそうとする行動)がリーダーシップであり、人間力であるといえます。魅力あるリーダーシップを人間力ととらえる見方もあるかもしれません。

今後「行動」と「リーダーシップ」と「人間力」の関係をさらに深く研究したいと考えております。

2015年4月14日(火)

営業能力パワーアップ研修」を振り返って

(株)A社 営業本部長M.K

住宅の販売設計施工を行っているが、若手営業担当の伸び悩みが大きな課題であった。
そんな中、営業力強化を目的に、平成13年5月から6か月のプログラムで星さんに研修をお願いした。
最初に行動特性診断テストを実施した後、月一回の個人面談とメールでのやり取り等、マンツーマンを基本として進められた。
一貫していたのは、「本人の強み」に徹底して着目し、一切の指示を排除して「本人の意思、自己決定」を粘り強く引き出すことを重視する姿勢である。

このことによって、当初はやらされ感のあった担当も、次第に自主性が芽生え研修に参加することを楽しみにするなど姿勢に変化が見られた。
最初の行動特性診断テストによる自己理解の促進、特に「本人の強み」の発見は担当にとって刺激的で説得力があった。
A社員は診断の結果「受容」に強みがあることに気づき、「お客様に興味を持ち、素直に受け入れる」ことを軸に試行錯誤を繰り返した。これにより、A社員は不安定だった成績が安定して優秀営業マンの仲間入りを果たすことができた。

この行動特性テストは、研修前と研修後に実施し行動特性の変化を数値で確認でき、本人が原因と結果に対して納得できるため、結果を一過性に終わらせることなく定着することに役立っている。
この後、A社員は自分の成績にとどまらず、後輩の育成や職場の環境改善を積極的に提言していくなど人間的にも視野が広がった。この研修が単なるテクニック研修ではなく、「人間理解」に根差したものであるからこその変化であることを付記したい。