研究員及び共同研究者からの寄稿ⅱ

「行動特性とアクティブラーニング」

 

相模女子大学

准教授 小泉 京美

 

現在、大学教育は学生の学びを実社会で活用できる能力育成に視点が置かれています。知を学生が噛み砕き実践に落とし込むことが出来なければ、学んだ知は枯渇して行きますが、知が活用されれば、知は知を生み発展していきます。今まで、その知の循環サイクルが大学教育の現場で上手く伝えられていなかったと言っても過言ではないでしょう。その結果、「大学の学びをいかに社会で活かすことができるのか」ということに学生達は悩み、大学の学びは無駄でアルバイト先での学びの方が社会に出て役に立つと考え、授業に出ないという本末転倒の状態が発生しています。平成27年度の東京大学入学式の五神誠総長の式辞でも、知識を武器として活動し、既存の常識を超える新たな発明や発見をし、それを武器に世界を舞台に人類社会に貢献する人物を「知のプロフェッショナル」と呼び、そのような人物を育成していく必要があると述べています。そのためには「発想力」「考え続ける忍耐力」「自らの原理に立ち戻って考える力」の3つの基礎力が必要であり、机上の議論と実践の融合の場を重視しています。その取り組みとして東京大学ではFLYプログラムと称して能動的学習(アクティブラーニング)を教育の中に取り入れ、緒大学も同様の取り組みを実施しています。しかし、ほとんどの教育現場で実施後の効果を検証し、取り組みの改善などには至っていないのが現状です。結果、学生は参加することで学習効果があったと満足し、職員・教員はアクティブラーニングのプログラムを作り、学生に効果があったと思い込み、両者が効果より実施したことに満足しているアクティブラーニング症候群になっているのではないかという懸念があります。私自身、ゼミの授業を利用してビジネスプランコンテストに参加を促したり、地域との連携活動などを実施してきました。学生の成長は、目に見えて学生の行動変化で感じますが、次なる飛躍へと導くためには、その変化を学生自身が気づき、学ぶ喜び、成長する喜びを感じることが必要であり、如何に学生に「見えるようにするか」が課題でした。

3年前に研究学会で星さんと出会い、星さんの研究が行動特性と教育効果の関係であることから、共同研究として私のゼミ生を検証実験することに協力するに至りました。検証実験は、大学で実施している課外活動に参加している学生をサンプルにしました。サンプルは、1年間の長期に渡るプロジェクトの長期型と夏季休暇中に実施する短期型に分け、文部科学省の社会人基礎力をもとにコンピテンシーを抽出し、学生の行動特性の変化を検証しました。結果、長期型に参加した学生の行動は大きくプラスに変化したものの、短期型は、マイナスになるという検証結果となりました。しかし、短期の中でも例外があり、一週間佐渡に民泊し、現地で伝統芸能の太鼓(鬼太鼓)を学び、市で開催される芸能祭で披露するというプログラムに参加した学生の行動変化はプラスに反映していました。プラスの結果の共通点は、ゴールが設定されているという明確化と結果に対して第3者評価があるという点です。言い換えれば、学生にとって実行する目標設定が明確であり、ゴールに到達した時にフィードバックがあるということです。逆に、マイナスになった活動は、プログラムが悪いのではなく、学生がプログラムに対して実施したという事実だけが残り、自己の中で消化しきれない現象が発生し、結果マイナスになったと考察されます。つまり、フィードバックを実施するなどで学生の内面で発生する消化活動を援助できればプラス効果が得られると推測できるのです。

星さんのプログラムを利用し、学生の教育の向上を見える化し、さらなる飛躍へと繋げているわけですが、結果、ゼミの学生達はコンテストで優勝するなど結果を出し飛躍的な成長を遂げ、人間力を向上させて実社会でも活躍しています。詳細は、『キャリア教育で「人間力」が伸びる』(東方通信社)に記載していますので、ご興味がある方はご一読頂ければと思います。今後も星さんと共同研究を続け、さらに良いプログラムの開発に協力していきたいと思っています。